2020年冬アニメ『空挺ドラゴンズ』の評価&感想記事です。
どんな作品だったのか、視聴後でもオススメできるのか、ネタバレひかえめで振り返ります。
👍Very Good
- 映像がぬるぬるで綺麗
- 舞台や設定がすばらしい
- 原作の漫画よりも料理が鮮明にイメージできる
💭Not the Best
- 一貫した主人公の不在、群像劇としては中途半端
- 映像化特有のツッコミどころあり
- 他の要素とのバランスで、音楽が単調に聞こえてしまう
流し読み(もくじ)
客観的な指標

ファンサイトやデータベースサイトを見ていきます。
IMDb(海外サイト)
評価:3.05
(☆5換算、元のサイト上では☆6.1/10、投票数378、記事作成時点)
IMDbでは、一部投票者の性別と年齢の統計が見ることができます。
性別と年齢を公開している人の中では、30~44歳の人が多く、9割近い人が男性視聴者のようです。
☆10と☆1がほぼ同数になっていて、意見が極端に割れています。
MyAnimeList(海外サイト)
評価:3.55
(☆5換算、元のサイト上では☆7.09/10、投票数6494、記事作成時点)
MyAnimeListでは、☆の数以外に視聴の状態を見ることができます。
「視聴中、完走、保留中、切った、観る予定」の5種類。
参考程度ですが、ざっくり視聴者の19%くらいが脱落しているようです。
参考に他の2020年アニメでいうと、
同評価(7.09/10☆)の『プリンセスコネクト!Re:Dive』が約16%ほど、1期2期がほぼ同評価(7.08/10☆)の『邪神ちゃんドロップキック』は1期2期ともに1%ほどの脱落率。
邪神ちゃんが謎にすごい。
Anime News Network(海外サイト)
評価:3.5
(☆5換算、元のサイト上では☆7.7/11、投票数40、記事作成時点)
投票とは別のレビュー記事では総合Bという評価。
Theron Martinさんという記事をつくった方には、おおむね高評価でした。
海外の方には、ジブリを思い起こさない人もいるようです。
"「ハーマン・メルヴィル(アメリカの作家)の『白鯨』にアニメ『ラストエグザイル』(2003年)と、アニメの食通番組を混ぜると似たようなものになる」"
とレビューされています。
一気見よりも、数話ずつ視聴していった方が適しているそう。
一般フォーラムの書き込みでは、宮崎駿さんのことにきちんと言及されていました。
また、「捕龍」(英訳でドレーキング)から連想する「捕鯨」(ホエーリング)に関してマイナス印象を持っている方がいました。
もちろん、その意見に対する反論はきちんと投稿されています。
海外サイトを見た印象/主観での評価

海外評価サイトでは投票数が少なめで、あまり観られていないのか、それとも投票をしない人が観ているのか、実態は不明です。
放送時期が日本と同時ではなく、冬クール放送終了後の2020/4/30より「Netflix」で世界に公開されています。
その関係があるのかもしれません。
総合的に映像と音楽はかなり高評価だと思われます。
個人的な視点から言うと、原作既読で視聴していく場合に、ギャップが大きすぎて素直に評価できないところがあります。
海外のレビュワーの方にもいましたが、「傑作とは言いづらいけども良い線いっている」というのが素直な感想でしょうか。
何様という話ですが、オリジナル作品だと思えばかなりの出来だと思います。
当サイトでは☆3のくくりにさせていただきました。
はっきりとした意思をもって人にオススメするというより、無難でちょっとした驚きがあるところがかえってオススメしやすいですね。
ストーリーを分解してみる
全12話。
大まかに3つに分けられます。
- 船内や海の話(1~5話)
- 街の話(6~9話)
- 龍の回廊(10~12話)
具体的には、「5話の対人戦、6話で街に到着、11話のサバイバル」このあたりで毛色が変わって面白いと感じました。
もし途中で切った方がいれば、上記話数を目安に視聴しなおしてもいいかもしれません。
3話から4話の流れでダレてくる可能性
MyAnimeListの統計をざっと見たところ、4・5話でドロップアウトしている人がけっこういます。
他には1~3話切り、次いで6~9話切りもちょこちょこといった感じです。
10話以降の龍の回廊の話からは、ほぼ完走しているようです。
最初の方で切ってしまうのは作風が合わなかったんだろうなと予想ができます。
中盤で切るのは進展が少ないのと、はっきりとしたストーリーがある訳ではないので、そこが原因でしょうか。
何話が一番面白かったか?
⇒ 12話「龍の回廊」
12話で感動の終幕。ミカの敬礼が心に残っています。
1話を初めてみたときの感動も捨てがたいです。
2話まで夢中で視聴しました。
雑感
「映像のクオリティ高い……」
3Dならではの映像美に驚いたのが第一印象でした。
手書きのみで作ったら、とんでもない作業量になりそうだと余計なことを考えてしまいます。
PCとスマホの壁紙をぜひつくって欲しい。
本当に線が細かいというか、大空を駆け抜ける船や、キャラクターたちがよく見えます。
そしてそのままぬるぬる動く。
外の景色はもちろんですが、室内の背景の小道具から、船内の生活感までくっきり。
料理もまた美味しそう。
一瞬しか映らないのが、もったいないくらいです。
たまたま電車で視聴していたら、隣にいた男性からすごく見られました。
珍しいのもあると思いますが、それは見てしまう出来だなと思います。
アニメで変化した魅力は?
サブキャラの魅力がかなり増えました。
戦闘シーンと悩んだのですが、これが一番大きいような気がします。
アニメ用のデザインは癖が少なく、とっつきやすい。
声や色がつくことで、船員たちの魅力がばっちり増しています。
同じ服なのに、後ろ姿で全員を判別できるというキャラデザです。
魅力が分かりやすくなったキャラを一部抜粋。
声優さんは紹介するまでもなく、もはや風格をもっている方々。
- 交渉役の短髪ヒゲ ⇒ ギブス(cv. 諏訪部順一)
- 黒バンダナ(帽子) ⇒ ニコ(cv.櫻井孝宏)
- 船長(代理) ⇒ クロッコ(cv.関智一)
- 高身長メガネっ子操舵士 ⇒ カペラ(cv. 釘宮理恵)
特にカペラ役の釘宮さんに驚きました。
何度聞いても釘宮さんに聞こえない。
喧嘩したあとの「どうしたんですかボッコボコwww」というセリフが好きです。
そして以下の二人。このコンビは良い!
- 金髪逆毛の細目隊員 ⇒ フェイ(cv.古川慎)
- 黒髪、日和見する軽めな男性 ⇒ ソラヤ(cv.上村祐翔)
古川さんはワンパンマン、上村さんはヴィンランドサガのトルフィンなんですよね。
テンションが似たようなキャラを思い浮かべて、ニヤニヤできます。
- メガネ会計士 ⇒ リー(cv.佐々木啓夫)
意外となくてはならない存在。原作より存在感マシマシ。
もちろん、主人公ミカも前より好きになりました。
「キャベツ酸っぱいだもん」と言われると、タキタを応援したくなりますが!
ヒロインのタキタはもうメインを張れる。実際、張りました。
ミカと打ち解けて、互いに分かり始めると、もう安定しておもしろい。
「よだれきったねッ!!」みたいなやり取りも好きです。
ジロー/ヴァナベルは二面性があって良いと思います。力強さと弱さの相反する感じが素敵。
ヴァナベルはお姉さんですが、ジローと違う成長をしているような、内面を見つめているような。
改めてみると声優さんの配役が豪華ですね。
ここで挙げなかったキャラたちもよく覚えています。
同じような髪色と制服で、このキャラ立ちはすごいです。
(シェフとか機関室の人とか、違う服を着ている人たちもいますが)
キャラ同士の掛け合いで言うと、原作とはすこし違った展開や、追加の会話があったりするようです。いわゆるアニオリ。
例えば2話では、ジローが小型龍捕獲に参加していませんでした。
まとめ:人におすすめしやすい作品
全体的にきれいで、特に「一般の方におすすめしやすい作品」です。
ラピュタと共通するものが想像しやすいとなれば、紹介のしやすさも抜群。
ふつうの人にドロドロした変なのを紹介したらドン引かれますからね。
初めてディズニー以外の3Dアニメを見る人にもいいと思います。
良いところや微妙なところを含めて、感想を語り合うのも良し。
「あれ映像やばいでしょ!」「原作も良くてさー」
「どのキャラが好き?」「カーチャかわいい」etc...
管理人のようにアニメ友達がいない人は、ネットにつぶやこう……。
気になった点
※主観的な批評になります
ビジュアル(演出)
▼アニメにして分かることですが、上空での風が弱い気がします。
特に3話。ぎりぎりの嵐を抜けてラピュタを見つけないと、感動も目減りするのではないかというのが一個人の意見です。
▼料理自体はとても美味しそうですが、美味しく食べるシーンは表現が難しそう…。
一部わざとらしさや大げさな感情表現が否めないような気がします。
同時期の3Dアニメ、『ケンガンアシュラ』や『ドロヘドロ』ではそれほど違和感はありませんでした。
あちらはモーションに全振りなのか、感動シーンがないのか、加工がものすごかったりするのか、本当に些細な違いかもしれません。
▼女性キャラの可愛さに限界があるような気がしました。
元から露骨な作品ではなく、それを目的にしていないとはいえ、完璧すぎてふつうな印象を受けます。
ストーリー(構成)
▼ジローへのヘイト値が高くなりがちだと思います。
何かしらケジメをつけないと「なんだコイツ」となってしまう。
(いさぎよく謝る、利益をまわりに還元する、勝手な行動の報いをうける、少年的でやんちゃにするなど)
物語ではすでに弟分として信頼が厚い状態で、視聴者はそうなった経緯を知りません。
漫画のように自分のペースで物語を進められないため、かなり出しゃばっているように見えてしまいます。
▼危険が危ない(命の)。
主人公のミカはぶっ飛んでるのでOKとして、他の隊員が単独行動をすると心配になります。
「いいの? 大丈夫!?」と不安になる点が微妙にストレスフル。
指揮命令系統がほぼ守られないことが原因かもしれません。
もちろん、物語中に解放されてこそのストレス展開。緊張がとけたときは気持ちいい。
▼11話の幼龍がかわいい。
でもかわいさ以外に何かが欲しい。
2話にあった超小型龍のエピソードが脳裏にちらついてしまうためです。
タキタが血まみれになる未来が見えてしまいます。でも幼龍はきも……かわいい。
音楽(OP、ED、BGM)
▼すごく個人的な意見ですが、EDの入りのギターが嫌な音に感じられる。
不穏な展開を持ち越すのであればマッチしていますが、気持ちよく観終えたあとだと余韻が途切れるような気がします。
アニメではなく曲を単体で聞くと気にならなず、むしろ良いグルーヴ。龍の鳴き声を模している?
▼BGMの存在が大きすぎるところがある。
こちらも好みの話になってしまうのですが、BGMを長くかけすぎているため、感動に疲れそうになりました。
音が大きすぎる?ような気もします。(Netflix、ヘッドフォン視聴)
10話の「上昇気流で上がって落ちるまで」は一息つかないと長いです。静かな上空を眺めたい。
谷底のシーンでは、反射して響くような音が素晴らしく、静寂さが心地よいものでした。
▼最後に結果論ではありますが、媚び媚びで露骨な「料理の曲」と「幻想的な曲」が欲しい!
圧倒的な3Dのビジュアルに慣れてきたところで、「展開が平坦になった」と感じられるときがあります。
シーンごとは凄くて興味深いのですが、だいたい同じ場所にいるわけです。
客観視してしまう時間があるというか、ちょっとした飽きが出てしまう。
そんな中、「料理を作ってうまそう!」「流れる雲をみて癒されるー」「船や街の作り込みすげー」
その辺りをもっと魅せてもらえれば、雰囲気アニメ好きとしては生きていけます。
ストーリーを足早に、定番のスタイルをもっと際立てておくのもありなのかな、と恐れおおくも述べまして締めます。
ちなみに「Apple Music」「Spotify」あたりでは、ばっちりサントラが聴けますのでぜひどうぞ。(記事作成時点)
ギターの弦の動きまで分かる音質。43曲と聞き応えあり。燃える曲が多いです。
しかし、アニメを視聴をしているとメインの旋律しか聞こえてこないんですよね……。
龍捕りについては長くなりすぎるので割愛です。
今回書いていて、表現するメディアや手法で印象もだいぶ変わってくるのだと勉強になりました。
物語は基本ファンタジーです。
全部リアルでやったらまったく面白くないですからね。タキタはくさくないし。

©桑原太矩・講談社/空挺ドラゴンズ製作委員会