2020/10/16(金)に劇場版『鬼滅の刃 無限列車編』が公開されました。
上映時間は117分。原作コミックの7巻から8巻半ばまでのお話を描いた映画になります。
こちらのページでは評価+感想に加えて、いくつか気になったことを書いていきたいと思います。
テレビシリーズで本当にサクっとやれば、3~4話ほどの内容で終わってしまう可能性もあった中、作品の作り込みに驚くばかりです。
制作の方々には、ただ「すごい」と伝えたくなります。
上映時間117分は大まかな計算でテレビシリーズ6話ぶんほどの内容があります。
👍Very Good
- 3Dの演出を加えたバトル描写
- 映画ならではの音づくり
- 様々な理由で泣ける
⚠️Notes
- PG-12※とはいえ壮絶な内容
- 集合体恐怖症(斑点が苦手な体質)の人にはつらい?
- 部分的に眠くなるかもしれない(丁寧な作りのため)
※映倫=日本の映画倫理機構が定めた、年齢による映画の鑑賞制限。PG-12は、小学生(12歳)以下に助言・指導が必要となる区分。PG=Parental Guidanceの略。
興行収入について比較してみる
データの発表される週明けごとにニュースになってたね!
数字だけでは分かりにくいので、グラフで比較してみます。
※タップorマウスオーバーで数字が見れます
・週ごとのグラフ、青=興行収入、オレンジ=観客動員数
・白い実線は週100万人(週13億円くらい)のライン
・点線&破線は比較対象の最高値
初期のスケールが倍くらい違うよ、というグラフになりました。
比較対象に『君の名は』をピックアップ。
理由は、同じ日本のアニメで放映時期が近いためです。
『君の名は』は興行収入歴代4位でしたが、『無限列車』は3倍に迫るほどの勢いがありました。
分析は皆さんにお任せするとして、ひとつだけ気づいたことを述べると、『無限列車』は観客動員数に対して、興行収入の割合が高いような気がします。
理由は定かではありませんが、映画料金が2019年に100円ほど上がったことが要因のひとつににあるかもしれません。
月初めの週は「映画の日」でお安く鑑賞できたりするので、興行収入の割合が減っているのかな、とかそんな想像もできますね。
『無限列車』では何らかの理由で割引が使われずに、みんな映画館に駆け込んでいる可能性があります。
興行収入での比較は難しい
非常に長い目で見れば、巻き返しもあるかもしれません。
日本での興行収入第1位は長年、スタジオジブリの『千と千尋の神隠し』でした。
当然、その作品が比較対象としてニュースに取り上げられることになります。
しかし、興行収入の単純な比較は難しいと思われます。
比較対象の年代が離れていると、条件が異なってしまうためです。
物価や料金の違いは記録に直接響きます。
もし年代が違う作品を比較するのであれば、観客動員数でみるほうがフェアかもしれません。
とは言え、『千と千尋の神隠し』の2001年くらいだと、物価と映画料金の相関関係はあまり変わっていないようです。
変わった点は、スクリーン数が日本国内で1000くらい増えていることでしょうか。
いずれにせよ、『無限列車』が歴史的にものすごいことを成し遂げているのは変わらない事実です。
※スクリーン数などの参考記事、ガベージニュースさん
客観的な指標
ファンサイトやデータベースサイトを見ていきます。
IMDb(海外サイト)
評価:4.15
(☆5換算、元のサイト上では☆8.3/10、投票数2,851、記事更新時点)
IMDbでは、一部投票者の性別と年齢の統計が見ることができます。
性別と年齢を公開している人の中では、18~29歳の人が多くなっています。
ほぼ男性の投票ですが、約70%の人が性別を公開していないため実態は不明です。
年齢が高くなるにつれて評価が低くなっています。
18歳以下 ⇒ ☆9.3/10、18-29歳 ⇒ ☆8.4/10、30-44歳 ⇒ ☆8.0/10、45歳以上 ⇒ ☆7.4/10。
テレビシリーズの『鬼滅の刃』でも同様の傾向がありました。
MyAnimeList(海外サイト)
評価:4.26
(☆5換算、元のサイト上では☆8.76/10、投票数14,735、記事更新時点)
MyAnimeListでは、☆の数以外に視聴の状態を見ることができます。
「視聴中、完走、保留中、切った、観る予定」の5種類があります。
視聴予定の人が約25万人に対し、視聴中(?)が6,600人、観た人が14,513人と、多く見積もってもまだ8%くらいしか観られていないようです。
投票では☆10の人が42%、ついで☆9が25.8%、☆8が18.9%という評価になっています。
Anime News Network(海外サイト)
評価:?
(ユーザーの投票なし、記事更新時点)
投票はありませんでしたが、サイト内にレビュー記事は見つかりました。
Kim Morrissyさんによると全体で「総合B」、おそらく「普通」や「悪くない」という厳しめの評価です。
比較対象が、同じ制作会社の『Fate/stay night [Heaven's Feel]』にあるため厳しさが増しているのかもしれません。
アニメ映画をしっかり見ている方のようで、「確かにそうかもしれない」と思わせるようなことが、いくつか具体的に書かれています。
中でも気になったのは、煉獄の顔のアップが多く、体がよく動いていないという指摘です。
確かに、アップの画面が多くなると状況がよく分からなくなります。
映画ではさらに画面が強調されます。
一方でキャラを身近に感じやすく、感情移入しやすいのは利点です。
個人的な意見を述べると、キャラをしっかり描いた少年漫画の性質上、そういった指摘は仕方のないことだと思います。
アニメが誰に向けて作られているかを考えると、まずはジャンプを読んでいる少年少女たちが浮かんでくるはずです。
特にテレビシリーズが受けた状態であれば、映画専用に特別なギミックを用意するより、同じベクトルの演出でグレードアップするのが確実な手段だと思われます。
もちろんKim Morrissyさんは上記のことを理解した上でレビューを書かれています。
絶賛する声が多い中、厳しい評価は貴重ですね。
PVでどのような動きがあるか、すこし分かります。
(※戦闘シーンから再生されます)
https://youtu.be/-ewm56D9DzY?t=38
海外サイトを見た印象
『鬼滅の刃』は原作の雰囲気からして、個人的には特殊な作品だと思っています。
日本以外ではそれほど受け入れられないような気もしてましたが、それは間違いでした。
ファンサイトを見ると、テレビシリーズの方でも☆9/10に迫るような評価になっていて勢いを感じます。
ちなみに『無限列車』は日本での公開日に海外では観られませんでした。
しかしアジアの一部では少し遅れて、続々と2020年内に封切りされています。
北米ではファニメーション(配給会社)と提携しているアニプレックス・オブ・アメリカによって2021年に劇場公開予定。
北米以外での公開情報は出ていません。
ストリーミング配信がなされるかどうかも不明です。
そんな厳しい状況にもかかわらず、公開初期のデータベースサイトには結構な投票数がありました。
初期のレビューをみる限りは、日本で観ている人の投票のようでした。
英語のタイトルは「デーモンスレイヤー」となっています。
英・Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba - The Movie: Mugen Train
中・鬼滅之刃劇場版 無限列車篇
「オニスレイヤー」では伝わらない?
ゲームのストリートファイターには「狂オシキ鬼(oni)」というキャラクターがいますが、特例かもしれませんね。
国内サイト
ついでに国内の映画評価サイトもざっくりのぞいてみました。
どこを見ても、☆5を満点として☆4評価になるところが多いです。
海外よりも国内のほうが評価が辛いかと思います。
「映画すごく良かった!!」と書いていて☆3評価と投稿しているユーザーもざらにいます。
話題についていくために鑑賞している人も一定数いるかと思います。
映画単体では評価が別れそうな作品なので、評価サイトを見るのも難しいところです。
主観での評価
とにかく仕事が丁寧。
原作既読であっても、ハッと目の覚める演出で度肝をぬかれます。
まったく違和感のないオリジナルな要素と、アニメに落とし込んだ動きが見事にマッチしています。
もしアニメのみを追いかけているファンの方がいたとしたら、感涙どころの騒ぎではないかと思います。
視界がぼやけて、まともに観れない状態になるのは想像にかたくありません。
映画館では、一時退席される方をちらほら見かけました。
個人的にはハンカチとティッシュを持ち込まなかったことをかなり後悔しました。
総合的に☆5の最高評価をつけるにふさわしい作品だと思います。
しかし、「付き合いで観に来た」とか「とりあえず人気だからチェックしておく」とか、あまり乗り気でない方には、独特なノリ(特にギャグパート)についていけない可能性があります。
また「原作をチェックしているが、入れ込むほどでない方」には、冗長に思えるところがあるはず。
間の取り方がしっかりしていて、世界に入り込むようなつくりなためです。
それでも戦闘シーンは、誰であっても一見の価値があります。
『鬼滅の刃』が初見であっても、どういう設定やストーリーなのか、推測しながら観ていく楽しみ方もアリなのではないでしょうか。
完全初見で鑑賞するとどうなるのか
しかし、漫画やアニメ文化にあまりなじみがない人が鑑賞したらどうなるのでしょうか。
映画ブログをされている、353さんは楽しめたようです。
理由として、「説明が多いこと」と「登場人物が絞られていること」が挙げられています。
『鬼滅の刃』の作風に慣れていると何も感じませんが、よく考えれば炭次郎の実況中継や状況分析は視聴者に優しいものですね。
小さな子どもならいざ知らず、大人が見たらどんな作品なのかすぐに分かるつくりです。
他にも、どこかで見かけた展開や設定とはいえ、『インセプション』、『ゲーム・オブ・スローンズ』、『アベンジャーズ』など引き合いに出されると、確かにそうだなと思いました。
バトルシーンについて、善悪でなく価値観の違いでぶつかっている、新世代の作品という考察も興味深いです。
人気の波及効果、過剰摂取への注意
え、みてないなら人生損してますよ!
『鬼滅の刃』関連の商品を取り巻く状況は、その人気から相当な経済規模となっています。
公式のグッズは当然として、ひとたびコラボ商品をつくれば、物によっては売り切れ必至。
売り上げが数倍~数十倍になったりという、とんでもない効果があるようです。
「鬼滅の刃ハラスメント」略して「キメハラ」なる言葉もつくられました。
当然、作品をあまり面白くないと感じる人も当然います。
また作品を観ない人とっては、ここまで人気になると逆に見たくなくなる心理が働いていることだと思います。
「作品は好きだけど、作品のファンが嫌い」というのはあまり健全な状態ではないはず。
過度な賛美には気を付けたいところです。
そして、もし『鬼滅の刃』が好きであっても、あまりに多く目にするとうんざりしてくる可能性はなきにしもあらず。
ネットやテレビを見る人であれば、一日に一回必ずどこかで見かけるような時期がありました。
何か話題をみかけても適度にスルーするなど、反動でアレルギーを起こさないようにしたいですね。
内容の三行まとめ
- 炎柱・煉獄に会うため、無限列車へ乗り込む
- 乗客を守りながら、魘夢(えんむ)との対決
- 煉獄と猗窩座(あかざ)の決闘
シンプルな分かりやすいストーリー。
原作のお話からして畳みかけるような展開だったために、映画との相性はとても良かったのではないでしょうか。
主人公・竈門 炭治郎が炎柱・煉獄杏寿郎に会いに行ったのは、「火の呼吸」と「ヒノカミ神楽」について聞くためでした。
原作では鬼殺隊の任務と言う訳ではなく、突発イベントのような形です。
テレビシリーズで補完が入り無限列車編に入るまでにとても良い盛り上がりになっていました。
炭治郎は父・竈門炭十郎の手がかりを求めています。
炎柱・煉獄は炎の呼吸の使い手。
「火の呼吸」と「ヒノカミ神楽」については知らないと答えます。
しかし、他の呼吸についての情報と煉獄家に伝わる書物について言及し、炭治郎に煉獄家を訪ねるよう促しました。
そして乗り込んだ無限列車で、序列で7番目に強い鬼(強化済み)と遭遇。
さらに3番目に強い鬼にも出遭ってしまい連戦。
劇中に登場した「下弦の壱・魘夢(精神攻撃のやつ)」と「上弦の参・猗窩座(肉体派のやつ)」は「十二鬼月」の鬼です。
「十二鬼月」はラスボスの鬼舞辻 無惨が選んだ精鋭、無惨の血を分けた十二体の鬼になります。
いわば敵の親玉にがっつり噛まれたエリートゾンビたち。
修行後の炭治郎たちとはいえ、かなりの苦戦を強いられました。
原作との比較
とは言っても、漫画のコマとコマを埋めるアニメーションや演出にもの凄い力が入っています。
オリジナルのシーンが少し追加されていました。
冒頭のお墓のところが一番わかりやすいですね。
鬼殺隊から「お館様」と呼ばれている産屋敷耀哉が登場。
『鬼滅の刃』では「お館様」の存在が一種の救いでもあり、鬼殺隊として一丸となるための要の存在です。
「お館様」の登場は締めの前フリと言ってしまうと台無しですが、映画のエンディングに向かうにあたり、一つの作品として丸く収まる構成の一助となっていました。
映画もまとめてしまう。さすがお館様。
演出はかなり追加されています。
特に戦闘シーンは顕著です。
技術的なアニメーションはもちろんのこと、ほんの一コマしかない原作の絵から、なぜそこまで格好よく動きをふくらませることができるのか、と感動を覚える次第。
もちろん原作ではこの後にお話が続いていくわけですが、期待感をふくらませる演出も丁寧に入っていました。
例えば、呼吸の設定がエフェクト付きで説明されたり、「十二鬼月」の残りが影で見えたりといったところです。
原作既読の方であっても、わくわくが止まらなかったのではないでしょうか。
雑感
公開翌日にマスク着用のもと、満員の劇場で鑑賞しました。
体の反応を抑えて静かにみようとするのは無理があります。
感動するところではないのに目が潤む。
戦闘シーンで心が震えます。
原作既読だからこそ感じられる風情もありました。
物語を追うのに頭を使わなくてもよいというのは利点のひとつです。
風情とは違うところでは、炭治郎のセリフ「おれの家族がそんなこと言うはずないだろう」の一言にシビれました。
漫画でもジーンとくる心の動くシーンでしたが、アニメでは一味違います。
一瞬何を言われたのか分からない叫び声。
セリフ自体は、単語を区切らず一気に言い放つには微妙に長いものです。
セリフの後に「そうだ、あのセリフだった」と理解するまで2秒くらいかかったような気がしました。
セリフ一つで心が揺れ動くタイミングが変わるというのはアニメならでは。
(もしかしたら、映画館の大スクリーンならではともいえるかもしれません)
声優の花江夏樹さんや、音響スタッフさんの意図がそこにあるにしろないにしろ、ありきたりでない、面白い方向へ導かれた音の演出だと思いました。
最後の煉獄と猗窩座の戦闘がすごすぎて、そっちばかりの感想を書いてしまいそうなのですが、『無限列車』のおどろおどろしい雰囲気は魘夢という敵役があってこそです。
魘夢はけっこう謎な存在で、原作を読んでいても「厄介そうな敵が来たぞ」くらいな印象でした。
声がつくとがぜん印象が変わります。
魘夢役の平川大輔さんのすこし気だるく眠りに落ちそうになる声はたまらないですね。
再燃
2019年にテレビアニメが放送を終了してからほぼ一年。
登場人物たちと再会して「本当に続きができたんだな」と妙な感じがしたのが最初でした。
期間が空いていたこともありますが、テレビではなく映画感でが違和感のひとつ。
テレビシリーズを視聴し、無限列車の予告をみてテンションを上げてからの、公開日の情報がないという状態になり、正直なところ熱が冷めていた部分もありました。
しかし、これだけのクオリティの劇場版をつくってもらえれば、熱が冷めていようが何だろうが、再び燃え上がるんだなと新たな発見がありました。
映画公開時点で、原作コミックは完結に向けて佳境に入っていました。
完結前でもじわじわと人気が上がっていて、単行本が売り切れていて買えないなどが一種の社会現象が起こっていました。
世間一般では人気の絶頂。
そんな中での映画の公開。
公開から2か月ほどあとの2020/12/04に、最終巻『鬼滅の刃』23巻が発売となっています。
発売当日のコンビニでは朝の時点で売り切れていたり、平日のお昼に本屋さんに行列ができるなど、なんだか超人気ゲームの発売日のような感じになっていました。
何かにつけてニュースなどが駆け巡っていて、まだまだ人気は続くはずです。
普段からアニメを観る人には世間話のネタができてありがたいことですが、キメハラの件もあり、人によっては逆に話題に出しづらいという不思議な状態になっている気がします。
アニメで変化した魅力は?
やばいとしか言えないですね。語るのが難しい。
作画のすごいアニメは話題になりますが、動きが凄まじいぶん止め絵の静止画が崩れている(意図的に崩している)ことがあるかと思います。
止め絵もすごい。
もちろん崩すことの長所もあるので、どちらが優れているのか語るのは難しいですが、2020年の時代における作品としては非常に合っていると思います。
煉獄の初戦闘では度肝をぬかれました。
剣を構えてからのいきなりぶっと飛んで、すごいエフェクトと全身に響くような効果音。
列車の中は狭くて刀を振り回せないので、戦闘シーンでは別の背景モデルをつくって広くしていると、舞台挨拶にて外崎監督が言っていました。
灯りの明滅でモデルを入れ替えているらしいとのこと。
序盤でそんなに力を入れるところなのか?、あとの戦闘で見劣りしないか?、というのはすべてが杞憂。
後半になるにつれて全開に勢いをあげていきます。
煉獄と猗窩座との決闘では、常に本気モードでめちゃくちゃに戦っているという始末。
比較に出した『君の名は』もそうでしたが、一回見ただけではすべてを見切れない。
しかも劇場版クオリティ。
描画枚数が多くてぬるぬるです。
舞台挨拶では、外崎監督が原画の現物をお披露目していました。
一部のシーンだけだと思いますが、6秒で380枚や2秒に150枚といった作画枚数で動画が作られているようです。
もちろん1秒間(24コマ)に複数枚の画像をレイヤーで重ねての数だと思いますが、とんでもない手間がかかっていますね。
むかし『鬼武者』というゲームがありまして、それの炎技が重かったことを思い出しました。
もし鬼滅の刃のアクションゲームができたら、煉獄の力強い踏みしめや、激しい炎の剣戟を再現してほしいところ。
まだリリースされていませんが、スマホ向けアプリゲーム『鬼滅の刃 血風剣戟ロワイアル』か、PS4で発売予定の『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚(けっぷうたん)』で見ることことができるかもしれません。
まとめ:アニメ映画として新たな歴史をつくった作品
作品が面白いかどうかは、個人の感性もあるので一概には言えません。
しかし少なくとも日本においては、とても多くの人に影響を与えたという意味で、これ以上の作品はないと思います。
スタジオジブリの作品のように10年後20年後まで語られる、それだけの熱量と環境がありました。
そして『鬼滅の刃』の記録がまたいつの日か抜かれることを期待したいと思います。
気になった点
※主観的な批評になります
ビジュアル(演出)
▼特になし。
▼あえて言うとすれば、トライポフォビアと呼ばれる集合体恐怖症(小さな斑点が苦手な人)の人の中には、つらい人がいるかもしれません。
下弦の壱・魘夢(夢のやつ)が血鬼術のために目玉を出現させるからです。
そういう敵なのでどうしようもないですし、個人的にはむしろ目に透明感があって綺麗でした。
▼自決する、首をはねる、肉が斬れるといったシーンが生々しいので共感能力が高い人にもつらいかもしれません。
▼細かい点を言うと、鎹鴉が原作では泣いていませんでした。
鳥類は泣かないんじゃないかと思って調べたら、ちゃんと涙腺があるようです。
人の言葉や心を理解しているカラスともなればこれは泣きますね。
しかしデフォルメ描写の状態でなく、しずくがあふれるほど泣くのは多少違和感がありました。
ストーリー(構成)
▼前述しましたが、相当しっかり作られているため長いと思う人がいるかもしれません。
間を置かずに喜んでもう一度観に行くかというと「時間もかかるしな……」というのが正直なところです。
▼鬼滅の刃が好きな人には、むしろたまらないという評価になるかと思います。
短いシーンや戦闘シーンをコマ送りにして複数回確認したい。
音楽(OP、ED、BGM)
▼なにもなし。
ノイズを感じる気もしますが、座った位置や映画館の違いなど、鑑賞する環境でも変わってきそうです。
▼高音については、立体音響のような劇場内の空間、前方の空中から音が出ているような錯覚を覚えます。
ビリビリと響くような低音よりも、高音の抜けが良くて、つい空間を見あげてしまいました。
▼LiSA さんが歌う主題歌の「炎」がすごくマッチしていました。
作品を引き立て、寄り添うような曲調です。
EDクレジットで流れると身に沁みていく感じがします。
視聴後の余韻をとても良くしてくれます。(効果絶大でクレジットを見忘れました)
▼あえて言えば、TVアニメ『鬼滅の刃』一期の主題歌「紅蓮華」ほどのキャッチーさはないかもしれません。
ですがスルメ曲だと思います。
映画公開後の季節、冬にかけても合います。
煉獄そのもののイメージ曲というよりは、煉獄の生き様を描いた曲というイメージを受けました。
▼ちなみに「炎」「紅蓮華」ともにピアノ独唱バージョンがYoutubeで視聴できます。印象が変わる!
「THE FIRST TAKE」という一発撮りの収録パフォーマンスを公開しているYouTubeチャンネルです。
謎のチャンネルですが、ソニー・ミュージックエンタテインメントが関わっているとかいないとか噂があります。
余談:テレビシリーズの続き、2期について
映画公開時にとくに新しい発表はありませんでした。
2020/12/20に特別編集されたテレビ放送時なども同様です。
しかし、ここまで国民的な人気が得られれば、当然残り全てのアニメ化もなされる可能性は高いと思います。
原作は23巻完結です。
現在アニメ化は、一期2クール(26話)で1~6巻までの内容。
今回の劇場版で7・8巻途中までの内容が終わっています。
おおまかに残り15巻あるとして、最低でもあと4クールかそれ以上は必要になるはず。
1クール12話として48話ぶんのアニメ話数。
加えて、要所や最終章での劇場版は、章立てで分けるなどして十分にあり得そうです。
一番の問題は、熱が冷めないうちにどれだけ続編の制作が可能なのかということだと思います。
再燃の効果は上述した通りですが、10年後に完結編があっても……、それはそれでアリですね。
全年齢が見ていて、女性の視聴者も多いとなるとぜんぜん待ってくれそうですし、次の世代も観てくれそうです。
続編では、この劇場版で作られた3D演出などもおそらく流用もできるはず。
何かトラブルがあって制作会社が変わる、みたいなことがなければこのまま順当にアニメ化や映画化がなされていくのだと思います。
製作員会は集英社さんとアニプレックスさんだけなので揉めるようなことはなさそうです。
原作はすでに完結。
残弾も多く、売り上げは確実。
上がりきったハードルは余裕で超えてきそう。
二期について、今後の展開や続報を待ちたいですね。
初期の入場者特典
公開直後の特典は450万名に配布されました。
内容は「煉獄零巻」と「吾峠呼世晴先生のイラストを使用した特製ぬり絵」の2つ。
「煉獄零巻」は厚さが薄いと思いきや、内容が盛りだくさん。
若かりし煉獄の漫画、“大正コソコソ噂話”(キャラクターの設定)、監督と声優さんのインタビュー、テレビシリーズ本編のまとめと豪華仕様です。
ですがぶっちゃけて言うと、まとめやインタビューは読むのが面倒なのもあって、普通の人は漫画を読んで他はぱらぱらめくる程度だと思います。
一番の情報は、謎の多い魘夢の設定が一部のっていたことでしょうか。
人間時代は夢と現実の区別がついておらず、悪事も働いていたそうです。
ちなみに『無限列車』最初のキービジュアルは、「煉獄零巻」の表紙と同じもの。
第二弾キービジュアルは、この記事のサムネに使わせていただいているもの。
第三弾キービジュアルは、封切り日から2週間ほどたってから公開されたものです。
「無限列車」編ということで、猗窩座の存在は隠されていました。
煉獄と禰豆子の漢字について
ニュースサイトでよく見かける注釈が下の2つです。
※禰豆子の「禰」は「ネ+爾」が正しい表記となります。
※「煉」は「火」+「東」が正しい表記となります
気になっていたのですが、ただのフォントの種類による単なる表記の違いの注釈でした。
日本語でふつうに使われているフォントだと、漢字が別の表記になってしまうことがあるようです。
名前としての漢字は、名付け親でないと意味はとれませんね。
禰豆子の「禰」は、父のための廟(墓)を意味する漢字のようなので、祖先とのつながりを込めたのではないかと想像してみます。
『鬼滅の刃』のテーマにも合う気がするので、フォントのこだわりを含めて、誰か作者の吾峠呼世晴先生に聞いてみて欲しいところです。
©吾峠呼世晴/集英社
©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable